
本研究では、未就学児を持つ母親303名を対象に、子育てをより楽しく、充実したものにするために役立つ要因を調査しました。 調査には、父親の回答も数件いただきましたが、分析の都合上、今回は母親のみなさまからの回答のみを対象とさせていただきました。父親の皆様を対象とした調査も今後検討してまいります。
調査では、お子さんの保育園・幼稚園への通園経験の有無、孤独感、子育てに対する動機(楽しいからやっているのか、義務感からやっているのか)、周囲の目の気にしやすさなどについてお尋ねしました。
その結果、子育てを「楽しい」「面白い」と感じながら取り組むことで、負担感が減り、より充実した子育て体験につながることが分かりました(2)。また、子育ての重要性や意義を実感することが、子育てに対する肯定的な気持ちを最も強く高めることも明らかになりました(2)。一方で、孤独感が強いと、子育てを楽しいと感じにくくなることや(2)、周囲の目を気にしすぎると不安を感じやすくなることが分かりました(3)。就園後は新たな負担感を感じる母親もいることが示されました(1)。 この結果から、母親同士が気軽に交流できる機会を増やすことで、孤独感が軽減され、子育ての楽しさや意義をより実感できるようになることが示されました。
子育ての楽しさや充実感を高めるためには、物理的なサポートだけでなく、母親が子育ての喜びや意義を感じられるような心理的なサポートが大切です。このような支援によって、より多くの母親が子育てを楽しく、充実したものと感じられることが期待されています。
より詳しい内容は日本心理学会第89回大会(2025年)にて発表されました。
(1) 村上太郎・梅本貴豊・稲垣勉「保護者がもつ育児に伴う感情について(1)否定的・肯定的感情と就園経験との関連」
(2) 梅本貴豊・村上太郎・稲垣勉「保護者がもつ育児に伴う感情について(2)孤独感,動機づけとの関連」
(3) 稲垣勉・村上太郎・梅本貴豊「保護者がもつ育児に伴う感情について(3)公的自己意識と孤独感の関連における育児不安感の役割」
皆様のご協力に心より感謝申し上げます。