◆ 赤ちゃんも魔法使いになりたい ◆

名古屋大学大学院情報学研究科の孟(もう)です。日頃より、BOLDの調査にご協力いただき、誠にありがとうございます。私は、人間関係を理解する能力や、他者とコミュニケーションを取る能力など、社会的な認知能力がいつから・どのように芽生えてくるのかについて研究しています。今回は、幼い頃から生まれる「憧れる心」について、少し考えてみたいと思います。

現実ではあり得ないことを魔法使いやスーパーマンが超能力でこなしているのを見ると、フィクションだと分かっていても、思わず「すごい!」と感嘆してしまうのではないでしょうか。特に子どもたちは、こうした超越的な存在に強い関心を抱き、真似をしたり、言葉を真剣に受け取ったりすることが多いでしょう。一方、超越的な存在に対する憧れの気持ちはいつから芽生えてくるものでしょうか。

私たちの研究では、5〜6歳児がどのように超越的な存在を認識しているかを調査しました。研究では、子どもたちにテレビ画面で3種類の出来事を見せ、それぞれについて質問しました。画面では2人の人物が同じ目標を達成しますが、その手段が異なっていました。「普通の人」は人間の能力範囲内で行動し(目的地まで歩く、ライターで火をつける、不透明な箱を開けて中を見る)、一方で「超越的な人」は人間の能力を超えた手段を用いました(飛行して目的地に到達、口から火を吐く、箱を開けずに中を見る)。その後、どちらの人物に驚いたか、どちらがすごいと思うか、どちらが偉いと思うかを尋ねた結果、ほとんどの子どもが「普通の人」より「超越的な人」に対して驚き、その人物を優れていると評価したことが分かりました。

また、別の研究では、言葉を話せない1歳半の赤ちゃんを対象に、超越的なキャラクター(空中浮遊や瞬間移動を行うキャラクター)と普通のキャラクターを見せ、その2つがものを奪い合う場面を観察しました。結果として、赤ちゃんたちは普通のキャラクターが勝つ場面を驚きながら長く観察することがわかりました。すなわち、超越的なキャラクターが勝つことを期待していた可能性が示唆されました。

これらの研究は、私たちは幼い頃から、超越的な存在に対して憧れを抱き、そうした存在に高い地位を与えようとする傾向があるのかもしれません。「もし自分に備わっている能力を最大限に発揮できたら,我々は自らに仰天することだろう」。トーマス・エジソンもが唱えるように,私たちは自らの能力とそのポテンシャルに素朴な興味を持っており,それらを最大限に引き出すことは個々人にとって永遠の課題です。自分にはできないことをできる存在、もしくはできるはずもないことをできる存在への憧れは、社会が発展する上でも極めて重要な役割を果たしていることでしょう。

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