保護者視点からはじまる赤ちゃん調査

イヤイヤ期の子どもについて:パートII 「今までで一番手こずったイヤイヤ」は?

はじめに

本パートは、BOLDに登録されている保護者の有志による「保護者視点からはじまる赤ちゃん調査」研究チームが実施する第二弾の調査結果報告です。 今までで一番手こずったイヤイヤについて教えてくださいというお願いに対する自由回答を分析してみました。

方法

ワードクラウド

まず、テキストマイニングの手法を用いて、回答の中に頻出するワードを抽出しました。図中の青は名詞、赤は動詞、緑が形容詞、灰色は感情語となります。 taihen ※ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析( https://textmining.userlocal.jp/ )

この分析結果を横目に見つつ、全回答を読みながら回答の分類方法を考えました。そして、今まで一番手こずったイヤイヤが(1)どんな場面で起きていたのか、(2)その時の子供の欲求はなんだったのかに注目してさらに分類してみました。

結果

どんな場面で一番手こずった?

一番手こずったイヤイヤがどんなシチュエーションで起きているかを分類をしました。 自由回答を寄せてくれた全93回答を読み、6つの分類項目を作りました。そのうえで、それぞれについて回答の割合がわかりやすいように帯グラフで表したものが以下の図となります。 situation

各分類ごとに幾つか具体的な回答例をあげます。

  1. 食事場面 (19.4%)

    • 「ご飯が食べたいとアピールするのでご飯を用意するも、何が気に入らないのか、一口食べては「ギャ~」と泣き、おさまってもう一口食べても「ギャ~」と泣き、米粒が手にくっついても「ギャ~」と泣き、声をかけてもギャ~と泣き…とにかく食事中ずっと大騒ぎしている時期がありました。」
    • 「現在進行形ですが、ごはんを荒らされることです。偏食なので、これ食べてみない?と勧めたりするのですが、すぐに「食べない!!ごちそうさまするーーー!!!」となってお皿やコップをわざと床に落とします…。机に塗り広げたりも。」
    • 「カレーのルーをご飯にかけると怒る。数分前に「ご飯にかけて良い?」と確認したのに…」
  2. 日常生活場面 (17.2%)

    • 「お風呂、夕飯、寝かしつけの夕方の時間帯に、あらゆることでイヤイヤが連続するとき。お風呂イヤ、ご飯イヤなど、一つ一つは些細なことだが、連続するのと、やらせないわけにもいかず、毎日あるのでイヤイヤもエスカレートする。」
    • 「おむつ替えを嫌がり逃げ回ったりするのですが、1日に何回もあることなのと、毎日なので本当に面倒くさいです。」
    • 「寝たくないけど眠たい!といって泣きわめく。寝室で暴れる。」
  3. 移動時 (16.1%)

    • 「保育園の送迎で自転車に乗ってくれないのは大変でした。あまりに大変で、もうこちらの思い通りにすることをあきらめるという選択をしてから、他のことに対するイヤイヤも、対処対応がすごく楽になりました。」
    • 「眠い時に、ベビーカーから降りて歩きたいと号泣し、歩き始めたら、疲れたし眠くてベビーカーに乗ると号泣。この繰り返しになった時。」
    • 「車の中で、高速道路を運転中のママのところに行きたいと、大泣きしながらチャイルドシートから抜け出してしまったのを、パパが隣で必死に押さえてた。何をしてもダメで、結局ママが車停めて、抱っこするまで、泣き続けた。」
  4. 公共の場所 (15.1%)

    • 「ファミレスに入ろうとするとイヤだと抱っこしても身体を沿って抵抗するので、主人だけ中に入り注文して食べ終えて、私(母)と交代しようとしたが、引き続き激しく抵抗したので、結局中に入れず食事も取れなかった。」
    • 「商店街のど真ん中の道路に大の字で寝転がる。抱っこしようとすると、電信柱にしがみつく。それでも連れて行こうとすると、自転車の前カゴの座面に立つ。」
    • 「西松屋の床で突然床ごろして動かない。抱っこしたり起こすと大癇癪を起こす。結局30分くらい店舗の天井を見つめてた。」
  5. 保育園・幼稚園場面 (8.6%)

    • 「幼稚園の教室に1人で入れない。補助の先生と一緒にいる。慣れてくると先生から離れても活動できる。幼稚園の門から教室まで、1人で歩いて行こうとしない。親が毎朝抱っこで登園している。」
    • 「下の子の産休に入り、短時間保育になったとき、大きいお腹で徒歩20分かけて保育園につれていったにも関わらず、「やっぱり保育園行かない!いやぁぁぁあ」と泣き叫び、手もつけられなくなり結局家につれて帰ったこと。」
    • 「歩けない弟を抱っこさせてもらえず、保育園からなかなか帰れない。」

どんな場面でもイヤイヤは生じていること、そしてその時の保護者の苦労や子どもの感情表現の特徴が生々しく伝わってきます。特に、日常的に繰り返される場面での対応の難しさや、公共の場所での対処の大変さが印象的です。

どんな理由でイヤイヤしてると思えた?

次に、子どもがどんな理由でイヤイヤしていると感じたかについて、同様に分類しました。こちらも全回答を読み、みた感じで分類しています。分類項目は以下のとおりとなりました。そのうえで、それぞれについて回答の割合がわかりやすいように帯グラフで表したものが以下の図となります。 wants

各分類ごとに幾つか具体的な回答例をあげます。

  1. 拒否の表現 (26.9%)

    • 「だっこもいや、歩くのも嫌で地面に寝そべって動かなくなる。」
    • 「おっぱいもいや!抱っこもいや!下に下ろすのもいや!おやつもいや!おもちゃもいや!テレビもいや!お出かけもいや!とにかく全ての提案がいやーーー!」
    • 「お風呂、夕飯、寝かしつけの夕方の時間帯に、あらゆることでイヤイヤが連続するとき。お風呂イヤ、ご飯イヤなど、一つ一つは些細なことだが、連続するのと、やらせないわけにもいかず、毎日あるのでイヤイヤもエスカレートする。」
  2. 遊び・楽しみの要求 (17.2%)

    • 「YouTubeで気に入らないと番組を変えろと怒す。言葉が完璧でないのでアンパンマンやだ!ポロロやだ!と言われたものに変えても違う!!と言われて結局何が見たいかわらず困ってしまう。結局最初にやだと言ったものに落ち着く。」
    • 「まだ遊ぶ!まだ遊ぶ!と言って遊び場から帰らない。」
    • 「スーパーのカゴが好きで、私の真似をして関係ない品物を自分のカゴに入れていた子供でしたが、「これは今必要ないわ」と言って棚に目の前で戻したら、床に転がりイヤイヤ。店内なので本当に大変だった。」
  3. 自分でやりたい要求 (16.1%)

    • 「ご飯を自分で食べたい。ので、親が口に持っていっても食べない。しかし、自分ではこぼしてほぼ口に入らない。フォークを3本用意して食べ物をさしておいて、本人に渡して食べてもらう。」
    • 「自分でしたい、でも1人介助もなくご飯を食べきれない、余計に怒って泣く、手を出したらまた自分でしたいと大泣き。」
    • 「まだ本格的なイヤイヤは始まってないと思うのですが、今までで1番大変だったのは、2Lのペットボトルを自分でレジまで持っていきたい!とされた時。」
  4. 矛盾する要求 (14.0%)

    • 「チーズ食べたい!と言うので渡すと「いらない!」と投げられ、片付けようとすると「食べる!」と言ってまた渡すと「いらない!」と投げられた。自分で取りたいのかと思い冷蔵庫を開けて抱っこして自分で笑顔でチーズを取ったかと思ったらその手で「いらない!!」と投げ捨て泣かれた。チーズのくだりで30分は使った。」
    • 「眠い時に、ベビーカーから降りて歩きたいと号泣し、歩き始めたら、疲れたし眠くてベビーカーに乗ると号泣。この繰り返しになった時。」
    • 「~食べる!と言って用意しても、食べない!やっぱりこっち!と言って、やはり食べない!のループになってしまうこと。」
  5. 抱っこ・密着要求 (12.9%)

    • 「両手ふさがって、バギーなどないときに、あるきたくなくて抱っこを求められたとき。」
    • 「妊娠中でおなかが大きいのに抱っこじゃないと頑として動こうとしない。」
    • 「荷物が多い時の「抱っこして!」です。「じゃあ一旦荷物だけ置きに行かせて」も「後で荷物だけ取りに行かせて」のどちらもダメで荷物を持って抱っこしないといけなくて大変でした。」
  6. 不明確な要求 (12.9%)

    • 「何が嫌かも自分でわからなくなってしまってパニックになっている時が1番気持ちの整理に時間がかかりました。」
    • 「イヤという言葉をこちらがあまり使わないからか、嫌な気持ちを他の言葉で伝えてきます。でも、「痛い」とか「怖い」という言葉を使ってくるので、毎回心配したり可哀想になってしまいます。たぶん本人は痛くなくても怖くなくてもとりあえず言葉を発しているのですが、こちらとしては本当に痛いのかわからなくて毎回困惑します。」
    • 「お願いされたことをしても、違うと言われ、結局なにがして欲しいかわからなかった。ままごと遊びに付き合っているときなど。2歳過ぎころはおしゃべりも上達してきたが、子供も上手く説明できないので、本当にしてほしいことが細かく伝わらなくてイヤイヤが酷かった。」

考察

どれも結局は拒否の意思表示ではあるのですが、そこに至るまでの理由として保護者がある程度推測が可能なものと、推測できないものがあるように思えます。遊び・楽しみの要求 、自分でやりたい要求、抱っこ・密着要求 は何をして欲しいかは明白だけれども、状況的にそれが許されなく、子どもがイヤイヤをしている状況が目に浮かびます。一方で、拒否の表現、矛盾する要求、不明確な要求 はイヤイヤの理由が保護者にもわからない場合が多く含まれているように思います。 分析していて、これらのイヤイヤが単独で発生するというよりも、日常生活のどのシチュエーションでもイヤイヤが起こりうるだけでなく、連鎖的に起こりうるのだということを実感しました。食事、おむつ替え、お風呂といった基本的な生活場面で繰り返し発生することで、保護者の心身の疲労も蓄積されやすい状況が見て取れます。 また、回答からは、子どもの自己主張や自律性の芽生えが垣間見えました。「自分でやりたい」という要求は、成長の証でもあり、それが時として状況との折り合いがつかず、イヤイヤとして表出している様子がうかがえます。 公共の場面でのイヤイヤは、周囲の目も気になり特に対応が難しいものの、多くの保護者が経験する普遍的な課題であることも、この調査を通じて改めて確認できました。このように、一人一人の経験を共有することによる、「自分だけじゃない」という気づきが、子育ての孤立感の軽減に少しでもつながれば幸いです。

とある2歳児のイヤイヤ日記

みなさまの回答を組み合わせて、ある一人の2歳のお子さんの一日を日記風に書いてみました。日常の中に如何にたくさんのイヤイヤが発生する余地があるか、もしそれが次々に起きてしまったらと思うと、あまりの過酷さに精神も体力もボロボロになってしまいますね…

2024年X月Y日

朝、着替えの時間がやってきた。まだトイレトレーニングが十分でないのに、「オムツを履かない!」と言い出した2歳の我が子。着替えを嫌がり部屋中を逃げ回る。

やっとのことで着替えを済ませ、朝食。ご飯が食べたいとアピールするので用意するも、何が気に入らないのか、一口食べては「ギャ~」と泣き、おさまってもう一口食べても「ギャ~」と泣き、米粒が手にくっついても「ギャ~」と泣き、声をかけても「ギャ~」と泣き...とにかく食事中ずっと大騒ぎ。

朝食が終わり、保育園への道。自転車に乗せようとすると「乗らない!」と45分間頑なに拒否し、自転車の前カゴの座面に立って抵抗する。結局、雨の中レインコートを着せて歩くことに。 徒歩20分かけて保育園に連れていったにもかかわらず、「やっぱり保育園行かない!いやぁぁぁあ」と泣き叫び、手もつけられなくなり結局家に連れて帰った。

午後、保育園からの帰り道。家が近づくと、商店街のど真ん中の道路に大の字で寝転がる始末。抱っこしようとすると電信柱にしがみつき抵抗。家に帰ったらお菓子があるよと話してなんとか帰宅。

そしておやつの時間。「チーズ食べたい!」と言うので渡すと「いらない!」と投げられ、片付けようとすると「食べる!」の繰り返し。自分で取りたいのかと冷蔵庫を開けて抱っこし、笑顔でチーズを取ったと思ったら、その手で「いらない!!」と投げ捨て泣き出す。このやりとりだけで30分が過ぎた。

夕方になり、YouTubeを見ている我が子。でも見ている番組が気に入らない、番組を変えろと怒る。言葉が完璧でないため、「アンパンマンやだ!ポロロやだ!」と言われたものに変えても「違う!!」の一点張り。結局何が見たいのかわからず、最初に「やだ」と言ったものに落ち着く。

今日はお父さんが早く帰ってきて家族で夕食を外食することになっていた。楽しみにしていたが、ファミレスに入ろうとすると我が子が「イヤだ」と激しく抵抗。抱っこしても体をよじって抗う。主人だけ中に入って食事を済ませ、私(母)と交代しようとしたが、相変わらずの激しい抵抗に、結局私は中に入れず食事も取れないまま。

そして一日の終わり、寝かしつけ時。「寝たくないけど眠たい!」と泣きわめき、寝室で暴れる。今日も疲れた。。。

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