◆ 赤ちゃんにも個人差がある ◆

佛教大学教育学部臨床心理学科の箕浦有希久です。日頃より、BOLDの調査にご協力いただき、誠にありがとうございます。

みなさんは「気質」という言葉をご存知ですか? 気質とは、お子さんが生まれながらに持つ個性の“初期値”のようなもので,成長とともにその子らしい個性へと発展していきます。例えば、笑顔が多い子や慎重で怖がりな子など、赤ちゃんの頃からそれぞれに違いがあります。これは親の育て方だけで決まるものではなく、もともと持っている性質がベースにあるのです。お子さんが笑いやすい、怖がりやすい、あるいは気持ちの切り替えが得意など、赤ちゃんの頃から見られる反応の違いは、実はその子の気質によるものです。

2024年8月に東京大学伊藤国際学術研究センターで日本赤ちゃん学会第24回学術集会が開催されました(参考Webサイト)。この学術集会にて,BOLDを通じて箕浦有希久(佛教大学)・大谷多加志(京都光華女子大学)・加藤正晴(同志社大学)によって収集されている気質と発達の研究データの暫定分析結果が報告・紹介されました。

報告されたのは,質問紙調査法を用いて10か月時点の179名から得られた気質データに基づく分析結果です。この研究では乳幼児の気質を大きく4つのタイプに分けました。

  • 育てやすい子:穏やかで機嫌が良く、気持ちの切り替えが得意。
  • むずかしい子・適応の真っ最中:感情の起伏が大きく、不機嫌から回復しにくい。
  • おとなしい子・低活動低反応:控えめで穏やか、反応が少ない。
  • 葛藤の多い子・挑戦中:積極的に関わるが、不安や悲しみも感じやすい。

これらの気質は、【接近快活性】【行動的抑制傾向】【エフォートフルコントロール】という3つの特性に基づいて分類されました。

  • 接近快活性:ポジティブな感情や新しいことへの興味の度合い
  • 行動的抑制傾向:不安や恐れを感じる傾向
  • エフォートフルコントロール:感情や行動を調整する力

分析の結果、どの子にもその子ならではの良さや成長の可能性があることが分かりました。特に、「むずかしい子」や「葛藤の多い子」にも、早熟であるがゆえの悩みが隠れている場合があることがわかってきたのです。気質を理解することで、「育てにくい」と感じる場面も「うちの子はこういう性格なんだ」と受け止めやすくなり、育児における不安や負担感を軽減する手助けとなります。

育児の悩みに寄り添う もし「育児がうまくいかない」「私のせいかもしれない」と感じることがあったら、お子さんの気質に目を向けてみてください。気質を知ることで、「うちの子の特徴なんだ」と受け止められるかもしれません。そして、それが親としての不安や罪悪感を軽くしてくれる助けになります。 また、専門家のサポートを活用することもおすすめです。気質に合わせた子育てのヒントや方法を教えてもらうことで、お子さんとより良い関係を築くきっかけになるでしょう。

気質の視点からのアドバイス たとえば、「葛藤の多い子」は、感情のコントロールが育っていくと「育てやすい子」に近づく可能性が高いです。また、「おとなしい子」は、ゆっくり成長しながら個性を発揮していく場合が多いことがわかっています。このように気質の理解は、将来的な成長を見通すためのヒントにもなります。 さらに、気質は行動療法や発達支援の土台にもなるため、専門家のサポートを受ける際にも役立ちます。たとえば、気質を知ったうえで、「不安を減らす遊び」や「自己コントロール力を伸ばす環境づくり」といった具体的な方法が提案されることがあります。

保護者のみなさんへの応援メッセージ お子さんの気質は、成長の大切なヒントになります。たとえ育児が「むずかしい」と感じる瞬間があっても、それはお子さんの個性が豊かに発揮されている証拠かもしれません。お母さん自身も無理をせず、お子さんと一緒に少しずつ歩んでいければ、それが一番の宝物になりますよ。 育児に悩んだときは、「うちの子にはこんな良さがある」「今はこれが成長の途中なんだ」と前向きに捉えてみてください。気質はお子さんの未来を形作る大切な要素です。 そして、専門家や周りの人とつながり、情報を共有することも、心の支えになります。育児は悩みや喜びの連続です。どうか一人で抱え込まず、周りの人や専門家とつながりながら、楽しい子育ての時間を過ごしてくださいね。

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