◆ BOLDコラム第3回 ◆
佛教大学教育学部臨床心理学科の箕浦です。 一年のうち昼間の長さが一番短いのは「冬至」ですが,一年のうち日の出が一番遅いのは1月初旬頃になるそうです。どうりで年が明けても朝の寒さが身にしみるわけですね。冬になるとみなさんは「日が短くなったなあ」と感じられたでしょうか。それとも「夜が長くなったなあ」と感じられたでしょうか。どちらも同じことのようですが、私が専門とするパーソナリティ心理学の視点からは大きな違いがあります。
明るく活動しやすい日中が短くなってしまった、と考えた人は「報酬の減少」を気にかけていると言えます。新し物好きで衝動買いをしがちな人や、初対面の人が多くいるにぎやかな場を好む人が多いと推測されます。暗く活動しにくい夜間が長くなってしまった、と考えた人は「損害の増加」を気にかけていると言えます。見知らぬ人や場所に不安を感じやすい人や、他者からのネガティブな評価を恐れる人が多いと推測されます。
このような認知・感情・行動の個人差には遺伝的影響もあるため、この世に生を受けた時点から全員が均等ではなく、スタート地点のさまざまな個人差があります。しかし同時に個人差は生涯不変ではなく、ある程度の一貫性を保ちつつも日々の経験を通じて変化・成長していくものでもあります。
赤ちゃんにも一人ひとりさまざまな個人差(性格や性質)があります。それを測定して養育に役立てたり将来を予測したりしようとする研究は、乳幼児気質研究と呼ばれます。1970年頃に行われたトマスとチェスのニューヨーク縦断研究では、調査対象の子どもたちを9つの気質の基準で評価し、いくつかのタイプに分類しました。睡眠・食事・排泄が安定的で機嫌が良くて精神状態が安定している「育てやすい子」、睡眠・食事・排泄が不安定で機嫌が悪くて精神状態も不安定な「育てづらい子」といったタイプです。
1970年頃当時、子どもの機嫌の悪さや精神状態の不安定さなどはすべて養育をする親のしつけ方や子育てに問題があるからだと決めつけるような風潮もあったと言います。「育てづらい子」の育児をする養育者の中にはすべての問題の原因が自分の子育てにあると考えて罪悪感や無力感にひどく苦しんでいた人も多かったと考えられます。そうして育児ストレスが過剰に高まれば養育の状況はさらに悪化し,いっそう子どもの問題行動が顕在化するという悪循環にも陥ってしまう可能性があるでしょう。
トマスとチェスの乳幼児気質研究は,養育者の子育てに関する技術や知識だけが一方的に子どもの個性や人生を決定すると考えるのではなく,子どもの生まれ持った個人差も併せて考慮する視点を提供しました。もし子育てについて悩みを抱えている方がいたら、どうか自分ひとりですべてを背負わず、周りの人たちや多様な専門家を頼りにしてもらえればと思います。BOLDには公認心理師、臨床心理士、臨床発達心理士もいます。どこに相談したら良いかわからない場合、私どもがお話を聞くこともできます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。 次は温かくなった春にお送りいたします!